山村の課題
めざす山村のかたち
2 山村の課題
先人達は、何回となく繰り返された国土不安、経済不安、安全不安を乗り越え、現代に引き継いで きました。そこにはたとえ厳しい条件であっても農林漁業が土台として国を支えてきました。たとえば、 100年前のわが国の森林面積は、国土面積の50%くらいまで乱伐され、各地で洪水や山地災害が発生して いました。こうした中で、「木を植えることは、山を治めること」として、国民を上げて進めてきたのが 治山事業であり、現在わが国の森林は国土の約70%まで回復しています。
山村は、面積の約75%以上が森林で覆われ、その維持管理を通じて国土保全や水源かん養など重要な役割を 担う最前線に位置しています。また、森林は、二酸化炭素の吸収・蓄積や気温調節、気象条件の緩和など 地球温暖化防止に大きく貢献しています。さらに、ストレスの多い現代社会において、癒しの効果に代表 される健康維持・増進や環境教育の場として活用されるなど、木材生産のみならず多様な機能を有しています。 それらの貴重な森林を守る担い手としてなくてはならないのが山村です。
ところが、山村は今、木材価格の低迷やそれにともなう間伐の遅れなど、林業の衰退、山村の高齢化、 人口減少によって地域社会を維持することも危ぶまれています。
いまやわが国の国土保全の最前線基地が弱体化し、危うくなるとともに、このままでは、 多様な森林の機能が失われ、自然と共生する日本文化や 自然と調和する人間らしい生活環境の場を失いかねません。